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「おいしいものと食べたいもの」


大郷町立大郷小学校  校長  河合 裕也

 給食に卵焼きが出ました。卵焼きは,子どもの頃大好きなおかずでした。それは今も変わりません。私は,「巨人,大鵬,卵焼き」の世代です。(本当は,柏戸の方が好きでした)給食の卵焼きは,子どもの時に食べたものとは違う味なのに,懐かしい気持ちで,一口一口,確かめるように食べました。

 私の母は,卵焼きをつくるとき,砂糖といった甘味料は一切入れませんでした。だから,大きくなって,甘い味の卵焼きに出会ったとき,目を丸くして食べたのを覚えています。「こんなにおいしい卵焼きがあるのか」と思いました。以来,私の頭の中に,「おいしい卵焼き=甘~い卵焼き」という方程式ができました。  私が小学校3年から中学校1年までいた町は,お昼は弁当でした。その弁当に卵焼きが入っていると,とてもうれしかったです。でも,時々,卵の中に葱やほうれん草が入っていました。当時の私にとっては,とても嫌でした。母にすれば,なんとか野菜を食べさせようという思いからしたことだと思います。でも,卵の味だけに浸りたい私にとっては,左右から野菜のパンチを受けるようで,苦しかったです。

 今も,おいしい卵焼きは,やっぱり「甘~い卵焼き」です。でも,「食べたい卵焼きは」と言われると,「甘味料なしの卵焼き」や「ほうれん草入りの卵焼き」です。すごく不思議だなと思います。口や体が「そっちの方がいい」と言っているように感じます。  でも,考えてみれば,至極当然なのかもしれません。私の味覚は,あの卵焼きで形成されたのだし,私の体そのものが,甘味料なしの卵焼きでつくられてきたからです。私の味覚がその味を要求し,私の体がその味を受容するのだと思います。  余談ですが,大人になり,母親に「葱入りの卵は,しんどがった」と言ったら,「おまえが,はっぱ,野菜,かねがらだ」と言われました。(どうやら私のせいのようです。) 「砂糖も入れねがったよな」と言うと,「おがずの甘いのは,好かね。」と言われました。(「母の好みだったのか」と思いました。)


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